毎年、歯科衛生士の数は増えているものの、人材不足はずっと続いています。
2021年の新卒歯科衛生士の求人倍率は、なんと22.6倍…。
「求人を出しても来てくれない」「新しい人が入ってもすぐに辞めてしまう」と悩んでいる歯科医院がある一方で、長期的に働くスタッフが多く、求人を出していなくても歯科衛生士から問い合わせがあるような歯科医院もあります。
この違いは一体、何なのでしょうか。
正直なところ、今の時代においては、私たち歯科衛生士は嫌な職場を辞めたとしても、ほかにもたくさん歯科医院はあるので、次の働き口をすぐに見つけることができます。
つまり、嫌なことがあれば「退職」という文字がすぐにチラついてしまうということです。
「ここで働きたい」といった歯科衛生士の希望を叶えてくれる仕事があり、「ここでなら働き続けることができる」といった女性のライフイベントの変化にも対応できる環境がある。どちらも必要な気がしています。
そこで今回は、「歯科衛生士の人手不足が起こる理由と解決策」というテーマでお話ししていきます。
人手不足を解消したい院長先生の方々にとっても、ヒントとなる可能性がありますので、よろしければ最後までお読みになってみてください。
歯科衛生士の人手不足が起こる理由4つ
歯科衛生士の人手不足が起こる理由は4つあげられます。
① 人間関係
歯科衛生士のダントツの退職理由が、人間関係です。
嫌味なお局がいる、院長先生に舌打ちされる、昼休みに愚痴や悪口のオンパレードがしんどい、助けてくれる仲間がいない…などさまざまなことがあり、人間関係に悩む歯科衛生士は多いようです。
② 仕事内容や職場環境
衛生管理がひどい、時間に追われるばかりでやりたい仕事ができない、機材が壊れたままになっている、歯科医師業務をやらされる、節約のために無駄な労力を使う、休みがとれない…あげだしたらきりがありません。
③ 給与や待遇
他院と比べてお給料が安い、賞与がない・少ないなどでも不満が募り、より条件の良い職場を求めて早期に退職してしまいます。
労働に対して見合っていない、長く働くことを考えたときに制度が整っていない、などがあると、他の歯医者に目移りしてしまうのは仕方がありません。
④ 出産や育児などのライフイベントの変化
どれだけ働きやすい環境を整えても、旦那さんの転勤、妊娠、出産、子育て、介護などで生活スタイルが変わると、独身のときのように働くことができなくなってしまう人もいます。
加えて、産休育休の制度が整っていなかったり、スタッフが少人数でお休みがとれなかったりすると続けたくても続けられないのです。
歯科衛生士の人手不足の解決策
下記に歯科衛生士の人手不足を解消し、スタッフが定着して安定した運営ができる方法を考えてみました。
労働者側の一方的な意見なので参考程度にしていただけると幸いです。
人間関係
人間関係の穏やかさがスタッフ定着率に大きく影響しています。
ネガティブな言葉は職場の雰囲気を悪くさせてしまうので、そういったことを常に言っているスタッフには注意が必要です。
また、意見が言いやすく、風通しの良い状況をつくってあげてほしいです。
「これを言ったら否定されるかも」と少しでも感じさせるようなことがあると、発言するのはデメリットが大きいので、言葉を発することができなくなります。どんな意見でも一度共感して、受け止めてあげてください。
また、「リーダーについていきたいと思えるか」も重要だと感じています。
人として、歯科医師として、尊敬できるかどうか。価値観や方向性の違いが多少あったとしても、院長先生のことが信頼できれば、頑張ろうと自然と思えるものです。
仕事内容や職場環境
仕事に専念できる環境があるかも大切だと感じています。
歯科衛生士の仕事にプライドや責任感を持てる環境があると、仕事に対する姿勢が変わります。
患者さんを担当制でずっと診ていて、信頼関係を築けたら、一度子育てなどで離れたとしてもまた戻ってきたくなります。歯科衛生士専用の予防ユニットがある、患者担当制、メインテナンス時間を長くとってもらえる、自分専用器具を買ってくれる…など、歯科衛生士として必要とされていると感じられ、自分のやりたい仕事がしやすい環境があるのは魅力的です。
超音波チップやスケーラーなどの器具、研磨剤などの材料、エアフローなどの器械の導入を検討していただけたら、患者さん満足度も得られやすく、労力の軽減に繋がることもあります。時短にもなるので、生産性も上がるのではないでしょうか。
また、ドクター業務としっかり分かれている、定期検診の最後にはドクターチェックしてもらえるなども、安心感につながります。
他にも、歯科衛生士は衛生管理をしっかりしたいと感じている人が本当に多いので、消毒・滅菌の見直しをお願いしたいです。
学校で習うことは大学病院レベルで徹底されており、それが当たり前として学ぶので、現場に出たときに雑な衛生管理は受け入れられません。
また、教育環境を整えることもおすすめです。
ただ淡々と目の前のことをこなす毎日をしていると、このままでいいのだろうかと疑問に感じてしまいます。
実力や知識がつけられるなど、働いていて将来性があるか。ここを大切にしていると、自然と学ぶ意欲の高い人も集まってきます。
未経験や復職の支援ができる環境があるのも幅広い歯科衛生士に響くのではないでしょうか。
給与や待遇
最後はやはり条件面です。他院より条件がよければ、離職も減らせ、求人の応募も増えますよね。
医院への貢献度をお給料に反映させる、わかりやすい評価や昇給の制度がある、退職金制度の導入なども勤務していて安心感があります。
また、女性のライフイベントの変化に対応できるように、フレキシブルに働ける制度があるとありがたいです。
そもそも歯科衛生士が少ないなか大変ですし、育休中の人材に困ることもあると思いますが、時短勤務、産休育休制度の活用があると「安心して出産できる」「子育て中も働くことができる」と感じられます。
休診日を少なくして営業時間を長くするほど売上はあげられると思いますが、贅沢をいいますと、休日数を増やす、診療時間を早めに終わらせる、残業を少なくするなども魅力的に感じます。女性は特に仕事だけではなく、子どものこと、家事や炊事などやらなければいけないことがたくさんあります。
少ない時間で集中して仕事をして、終わり次第すぐに帰宅できる環境は助かります。結婚している人は帰ってからご飯の支度をしなければならない、など考えると、遅くても18時には職場を出たいと思うのではないでしょうか。
そのためにも院内の無駄な業務を削減して、濃密に仕事ができる仕組みをつくる必要があります。
このような職場があれば、応募したくなります。
「医院のために働きたい」と仕事に対して前向きになれる人も増えるのではないでしょうか。
少しでもご検討していただける医院が増えることを願っています^^
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ライター
歯科衛生士/ライター・動画編集者
歯科医院で歯科衛生士をしながら、歯科メディアにてライター・動画編集者としても発信活動中。
現場で働くからこそわかる、リアルな声をお届けします。