厚生労働省が毎年行っている統計データに賃金構造基本統計調査(現時点での最新版は令和2年度調査分)というものがあり、民間の企業・事業所が従業員の給料を決める際にも活用されています。
今回は上記データから歯科衛生士の給料・年収を調べてみました。
「これから歯科衛生士になろうとしているけど、給料は高いの?」
「今の給料に不満があるけど同世代がどれくらい貰っているのか気になる。」
このような歯科衛生士のお金に関する悩み・疑問を解消できるはずです!
※令和2年度調査における歯科衛生士の回答者は女性のみとなっております。
- 1. 歯科衛生士全体の給与データ
- 1-1. 歯科衛生士(正社員)の平均月収は約26万円
- 1-2. 歯科衛生士(正社員)の平均年収は約356万円
- 1-3. パートで働く歯科衛生士の平均時給
- 2. 歯科衛生士の年齢と給料
- 2-1. 初任給
- 2-2. 20歳〜24歳(経験年数0〜3年)
- 2-3. 25歳〜29歳(経験年数4〜9年)
- 2-4. 30歳〜34歳(経験年数10年〜)
- 2-5. 35歳〜
- 3. 【エリア別】歯科衛生士の平均給料
- 4. 【勤務先の規模別】歯科衛生士の平均給料
- 5. 他職業全体との比較
- 6. 歯科衛生士の将来性
- 6-1. 有効求人倍率
- 6-2. ライフイベントに合わせた働き方
- 6-3. 給料・年収の伸び
- 7. 歯科衛生士が給料を上げるためには?
- 7-1. 給料の高いクリニックに転職
- 7-2. 自費診療中心のクリニックで働く
- 7-3. 役職への就任
- 7-4. 認定衛生士の資格を取得
- 8. 歯科衛生士は勝ち組なのか?
歯科衛生士全体の給与データ
歯科衛生士(正社員)の給与は約26万円
冒頭で述べた令和2年度賃金構造基本統計調査によると、
全国の歯科衛生士の平均月収は25.59万円です。
こちらは「きまって支給する現金給与額」という項目の金額であり、
労働条件・就業規則等で定められた給与額を指します。
所得税・社会保険を控除する前の額面給与であり、手取り額ではありません。
ちなみに上記は、残業代や通勤手当といった給与以外の現金支給を含んだ金額となっている点も注意してください。
歯科衛生士(正社員)の年収は約356万円
次に歯科衛生士(正社員)の平均年収を見ていきましょう。
平均年収については、おおよそ下記の計算式で算出可能です。
年収(概算)=きまって支給する現金給与額×12+年間賞与その他特別給与額
同調査で歯科衛生士が年間で受け取る賞与の平均額は49.03万円です。
賞与はだいたい月のお給料の2ヶ月分ですね。
上記の計算式をもとに算出すると、歯科衛生士の平均年収は356.11万円となります。
歯科衛生士(パート)の時給は約1,500円
歯科衛生士さんのほとんどが女性であるため、育児や家庭との両立を考えてパートで働く方も多いです。
賃金構造基本統計調査では短時間労働者のデータも存在します。
このデータによれば、全ての短時間(パート)で働く歯科衛生士の平均時給は1,521円です。
一般的にアルバイト・パートの時給は1,000円〜1,300円ほどなので、高いという印象を持った方が多いのではないでしょうか?
ただし、フルタイムで働く衛生士の母集団は平均年齢30.9歳、平均勤続年数5.9年なのに対して、
パートの母集団は平均年齢43.7歳、平均勤続年数は7.2年です。
パートで働いている衛生士さんについては、最初は正社員として1つのクリニックに長く勤めた後にパートになり、
時給面で厚遇されている方が多いです。
歯科衛生士の年齢と給与
初任給
賃金構造基本統計調査は0年目の給与額も集計されてます。こちらがほぼ歯科衛生士の初任給データと言って差し支えないでしょう。
こちらのデータ上では初任給が21.7万円となってます。
ただし、こちらは「所定内給与」なので、要するに「通勤手当等の諸手当は含まれているものの、残業代は含まれていない金額」ということです。
関東(1都3県)の新卒向け求人では、提示額23万〜24万円がボリュームゾーンとなってます。もちろんこれよりも多くの金額もらっている新卒の方もいらっしゃいます。
20歳〜24歳(経験年数0〜3年)
歯科衛生士の資格を取るためには専門の養成所(歯科衛生士専門学校)に通う必要があり、規則によって現在は3年制以上が原則です。
21〜22歳で歯科衛生士となってクリニックで働き始める方が多いので、経験年数で言うと0年〜3年目に当たります。
このゾーンの平均月収は諸手当、残業代込みで23.7万円です。
年間賞与は年間平均で31.41万円で、全体平均が50万円ほどあったことを考えると賞与は低めです。
年収に置き換えると315.81万円ですね。
「若手のうちはだいたいこれぐらい貰える」という一つの目安にしてみてください。
25歳〜29歳(経験年数4〜9年)
新卒から歯科衛生士を続けている場合、経験年数4年目〜9年目にあたります。
このゾーンの平均月収は24.48万円で、賞与は年間で46.79万円です。
年収換算すると340.55万円で、20歳〜24歳に比べて賞与の伸びが目立ちます。
30歳〜34歳(経験年数10年〜)
平均月収は25.47万円、賞与が53.62万円で、年収換算すると359.26万円。
経験年数は10年以上が多くなってきますが、年収がほぼ平均値に近づいてきました。
ただし、このあたりからは正社員で働く歯科衛生士さんは減少し、パートで働く方が大幅に増えてきます。
35歳〜
平均月収は26.52万円、年間賞与が61.53万円で、年収換算すると379.77万円です。
新卒時の年齢にばらつきがあるため「この年齢あたりで昇給額が頭打ちになる」と言うのは難しいですが、昇給ペースが落ち着いてくるのはこのあたりからです。
歯科衛生士の昇給ペースについては、給料が低いうちは上がり幅が大きく、一定の水準を超えると上がり幅が小さくなる傾向があります。
例えば、「最初は年間5,000円ペースで上がっていたのが、月給30万円を超えてくると年間1,000円くらいに落ち着く」といった感じです。
また、年間賞与は年間あたり基本給2ヶ月分のケースが多いため、
30万〜60万円くらいが相場なのですが、データ上の平均60万円は実態よりも高いです。理由としては大きい病院は賞与が多い傾向にあるので、そこが釣り上げてしまっていると考えられます。
新卒時の年齢にばらつきがあるため「この年齢あたりで昇給額が頭打ちになる」と言うのは難しいですが、昇給ペースが落ち着いてくるのはこのあたりからです。
歯科衛生士の昇給ペースについては、給料が低いうちは上がり幅が大きく、一定の水準を超えると上がり幅が小さくなる傾向があります。
例えば、「最初は年間5,000円ペースで上がっていたのが、月給30万円を超えてくると年間1,000円くらいに落ち着く」といった感じです。
また、年間賞与は年間あたり基本給2ヶ月分のケースが多いため、
30万〜60万円くらいが相場なのですが、データ上の平均60万円は実態よりも高いです。理由としては大きい病院は賞与が多い傾向にあるので、そこが釣り上げてしまっていると考えられます。
【地域別】歯科衛生士の平均給与
ここまで全体と年齢帯ごとで平均給与を見てきました。
ただ、このページをご覧になっている歯科衛生士さんは、都市圏に住んでいる方もいれば地方にお住まいの方もいるでしょう。
そこで、都市圏と地方の平均給与についてもいくつかピックアップしてみました。
東京の周辺は月給27.19万円、大阪は35.14万円、愛知県は25.46万円、福岡県は25.26万円です。
(※大阪は月給の高さは目立ちますが年間賞与は東京の半分近くとなってます。)
1つ参考にしてみてください。
【勤務先の規模別】歯科衛生士の平均給与
勤務先医院の規模別に見ると上の図のようになります。
まず、正社員の給与について見ていきましょう。
100人〜999人規模の医院が一番良さそうに見えますが平均年齢は10歳ほど高いため、クリニックの規模が給与に大きな給与を与えているとは一概に言えないでしょう(今回の回答者が偶々偏ったのかもしれませんが・・・)。
ただ、10〜99人規模のクリニックと1000人規模のクリニックを比べると、
前者の方が月々に貰える給与は高めで、後者の方が賞与の割合が大きいです。
これは大きな病院ほど、福利厚生含めた労働環境が整備されていることが反映されているでしょう。
次にパートで働く歯科衛生士さんの時給。
こちらも100〜999人規模の医院で働いている方の平均年齢が高めですが、
正社員と違って時給は他の規模と比べて低い数値です。
他職業全体との比較
賃金構造基本統計調査の「結果の概要」に男女計、男女別の賃金が記載されてます。
そちらの資料によれば男女合わせた賃金が30.77万円、男性の賃金が33.88万円、女性の賃金が25.18万円となります。
賃金と言うのは所定内給与(残業代を含めない給与)と対応しますが、
歯科衛生士全体の所定内給与額は24.49万円ですので、
歯科衛生士全体の所定内給与額は24.49万円ですので、
女性全体と比較して平均値は若干低めです。
20〜24歳までで見ると歯科衛生士の所定内給与は平均22.51万円、
全産業の男女全体が21.2万円であるため、歯科衛生士さんの初任給は高めです。
全産業の男女全体が21.2万円であるため、歯科衛生士さんの初任給は高めです。
その後は歯科衛生士さんの給与は女性平均値ほどで推移しますが、40代以降に他産業給与額の伸びが大きく、上記のような結果となりました。
歯科衛生士の将来性
将来性については「歯科衛生士という仕事の需要」、「ライフイベントへの柔軟性」、「将来的に給料がどれくらい上がるか」の3点から考えます。
有効求人倍率
というのも新卒歯科衛生士の求人倍率は2017年に20倍を超え、2020年現在もその水準をキープしているからです。
求人倍率というのは求人数に対する求職者の倍率のことで、この数値が高いほどより多くの労働者が求められている、つまり景気が良いということになります。
直近の世間の有効求人倍率が1倍〜2倍の間であることを考えると、20倍という数値がいかに大きいかが分かるはずです。
ライフイベントに合わせた働き方
また、家庭の事情で他県に引っ越すことになっても歯科診療所は全国に存在するため、仕事には困りません。
給料・年収の伸び
最後に給料面ですが、歯科衛生士の給料は「初任給はそれなりに貰えるものの、ある程度の年齢以上になると昇給額も伸びづらい傾向にある」と言えます。
実際、東京でも勤続年数だけの評価で年収500万円を超えるのは難しいです。
ただし、勤続年数だけで評価されようとすると難易度が高くなる昇給も、計画的なキャリアアップを図ることで実現可能性は高まります。
次項では歯科衛生士が給料を上げるための方法を解説します。
歯科衛生士が給料を上げるためには?
給料の高いクリニックに転職
給料を上げる方法として転職というのは非常に分かりやすい手段です。
ただし、給料額だけで転職先クリニックを決めてしまうのは非常に危険です。
まず、懸念点として考えられるのが「求人票通りの給料が貰えなかった。条件と違った。」となってしまうことです。
先述した通り歯科衛生士の求人倍率が非常に高く、クリニック側は衛生士の取り合いという状況になってきます。
どこのクリニックも「とにかく応募者を増やしたい」と考えるため、少しでも見栄えを良くしようと求人媒体の条件面は大きく見せがちです。
実際に入職してみると色々と理由をつけられて、求人票通りの給料を貰えないということは往々にしてあります。
もしくはお金だけは貰えたとしても、院長先生が金勘定の思想であれば居心地の悪さを感じながら働くことになってしまうかもしれません。
もう1つ考えられる懸念点としては「転職先クリニックで活躍できなかった」という場合です。
歯科業界はクリニックによってやり方が違うことも多く、前職で身につけたスキルが新しい職場でも評価されるとは限らないからです。
これは「衛生士歴」以外の統一された指標がなく、求人者と求職者の間でミスマッチが起こりやすいのも原因となっているでしょう。
自費診療中心のクリニックで働く
自費診療とは保険適応外の治療のことで、例えばインプラント・矯正・ホワイトニングなどがあります。
これらの治療は1回で数十万〜百万円ほどかかるものが多く、それに伴って保険診療よりもはるかに多くのお金がクリニックに入ります。
歯科衛生士さんから患者さんへの提案によって自費診療を実施することができた場合には、その分、歩合として還元してくれるクリニックもあります。
気になるクリニックが自費をメインでやっているかどうか知りたい場合は、そのクリニックが売上ベース5割を超えてくるかが目安です。
歩合でバリバリ稼ぎたいという衛生士さんは、クリニックがどのような診療科目をメインで行っているか確認しておくと良いでしょう。
歩合でバリバリ稼ぎたいという衛生士さんは、クリニックがどのような診療科目をメインで行っているか確認しておくと良いでしょう。
役職への就任
実は、だいたいのケースで1つのクリニックで長く勤めた方が長期的な収入は多いため、転職回数は抑える方が望ましいです。
長く勤めるとそれだけ院長先生・職場からも重宝されるからです。
クリニックによってはチーフやリーダーといった役職がありますが、
長く勤める方がこういった恩恵も受けやすいです。
役職に就くと役職手当がつくので、この方法で収入アップを図ることも可能です。
長く勤める方がこういった恩恵も受けやすいです。
役職に就くと役職手当がつくので、この方法で収入アップを図ることも可能です。
認定衛生士の資格を取得
資格を取ることで資格手当を支給してくれるクリニックもあります。
パッと出るのは「認定歯科衛生士」の資格ではないでしょうか。
認定歯科衛生士の資格もいくつかありますが、迷っている方に取得を奨励したいのは「歯周病認定歯科衛生士」の資格です。
・そもそも歯周病は歯科の基本であるため汎用性の高い領域であること。
・難易度が高いことを多くの院長先生が認知していること。
これらの背景があるため、取得を目指す価値のある資格だと言えます。
・難易度が高いことを多くの院長先生が認知していること。
これらの背景があるため、取得を目指す価値のある資格だと言えます。
逆に形だけで内実が伴わない資格はさほど評価されないので、取得を検討する前に「その資格に労力を費やして良いのか」をしっかり調査しておくことも重要です。
歯科衛生士は勝ち組なのか?
この記事では歯科衛生士の給料と、給料を上げる方法について解説してきました。
初任給は通常の大卒と同じくらいかそれ以上になることもあり、
若い時は同世代より比較的高給です。
若い時は同世代より比較的高給です。
ライフイベントに合わせた働き方を選択できる点も、
他職業と比べて恵まれています。
他職業と比べて恵まれています。
ただし、一定の年齢を超えてくると昇給幅が小さくなるため、
同世代の中でも上の水準を目指す場合は計画的にキャリア形成をする必要があります。
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ライター
転職カウンセラー
歯科衛生士の転職カウンセラーとして10年以上のキャリアがあり、これまでに歯科衛生士の転職サポートに携わった件数は日本でNo.2の実績を持つ。