歯科医師のリアルは【賃金構造基本統計調査】で分かる?

歯科医師のリアルは【賃金構造基本統計調査】で分かる?

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厚生労働省の“賃金構造基本統計調査”を知っていますか? 歯科医師の給与を知ることができる重要なソースなのですが、実際の給与とはどうも乖離があるみたい。

 

目次

 

【歯科医師の数】男女・年齢別

医療施設に従事する歯科医師は、男性が「78,160」人、女性が「23,391人」、合計「101,551人」となっています。(厚生労働省の平成28年(2016年)医師・歯科医師・薬剤師調査の概況)

【年齢別】【男女それぞれの年齢別】にまとめると下記のようになります。

 

医療施設に従事する『歯科医師』の総人数と割合(平成28年 ※2016年)
年齢層
人数
割合

29歳以下

6,414

6.3%

30~39歳

18,896

18.6%

40~49歳

22,287

21.9%

50~59歳

25,542

25.2%

60~69歳

20,649

20.3%

70歳以上

7,763

7.6%

合計

101,551

 

 

医療施設に従事する『男性歯科医師』の人数と割合(平成28年 ※2016年)
年齢層
人数
割合

29歳以下

3,554

4.5%

30~39歳

12,299

15.7%

40~49歳

16,267

20.8%

50~59歳

21,080

27.0%

60~69歳

17,945

23.0%

70歳以上

7,015

9.0%

合計

78,160

 

 

医療施設に従事する『女性歯科医師』の人数と割合(平成28年 ※2016年)
年齢層
人数
割合

29歳以下

2,860

12.2%

30~39歳

6,597

28.2%

40~49歳

6,020

25.7%

50~59歳

4,462

19.1%

60~69歳

2,704

11.6%

70歳以上

748

3.2%

合計

23,391

 

 

平成28年(2016年)医療施設に従事する歯科医師の総人数

 

上記をみると、50歳以上の歯科医師が、全体の半分以上を占めているのがわかります。また、男性歯科医師と女性歯科医師でもかなり状況は違うようです。

例えば、29歳以下では男性歯科医師と女性歯科医師の割合がそこまで変わりませんが、年齢が上がると男性歯科医師が圧倒的に多いです。

【クリニック数】×【歯科医師の人数】の関係は?

医療施設の数はどれくらいあるのでしょうか?(厚生労働省の平成28年医師・歯科医師・薬剤師調査の概況)

病院:医師又は歯科医師が医業又は歯科医業を行う場所であって、患者20人以上の入院施設を有するものをいう。

診療所:医師又は歯科医師が医業又は歯科医業を行う場所であって、患者の入院施設を有しないもの、又は患者19人以下の入院施設を有するものをいう。

と定義すると、

平成28年の歯科診療所は「68,940」と記載されています。この数値が「歯科クリニックの数はコンビニより多い」という逸話の元になっています。

医療施設の従事者である歯科医師「101,551人」のうち、『病院従事者』が「12,385人」(全体の11.8%)『歯科医診療所の従事者』が「81,058人」(全体の85.1%)になっています。※全体は歯科医師の総数「104,533人」を指します。

単純に考えると、歯科診療所「68,940軒」に歯科医師「81,058人」が勤めていることになる。すると、歯科クリニック(歯科診療所)1軒あたり歯科医師は1.17人となります。

つまり、歯科クリニックのほとんどは一人しか歯科医師がいない!

歯科医診療所の従事者「81,058人」のうち、
『診療所の開設者(又は代表者)』:「59,482人」(全体の56.9%)。
『勤務者』:「29,684人」(全体の28.4%)。
歯科診療所の数と診療所の開設者の数の差(9,458)から、およそ100軒に14軒は経営者が歯科医師でないようです。

歯科医師の【勤務先(病院・診療所)】と【年齢層別】のデータをまとめ直してみると下記のようになります。(残念ながら男女別のデータはないようです)。

 

医療施設に従事する歯科医師の『勤務先』と『年齢』(平成28年※2016年)
年齢層

病院に勤める人数

診療所に勤める人数

29歳以下

3,815

2,599

30~39歳

4,428

14,468

40~49歳

1,977

20,310

50~59歳

1,493

24,049

60~69歳

 622

20,027

70歳以上

 50

7,713

合計

12,385

89,166

 

平成28年(2016年)医療施設に従事する歯科医師の勤務先と年齢

 

【性別・年齢層】×【勤続年数】×【給与】の関係は?

年齢層別の男性歯科医師と女性歯科医師の平均月給など調べてみました。(平成28年の賃金構造基本統計調査)
下記のようになっています。

「男性歯科医師(企業規模10人以上)の年齢別の勤続年数と月収」
年齢層
勤続年数
平均月給(万円)
労働者数

20~24歳

0.5

14.1

10

25~29歳

1. 6

33.0

930

30~34歳

4.5

75.1

990

35~39歳

5.4

74.9

1,610

40~44歳

8.1

106.9

670

45~49歳

7.2

79.3

700

50~54歳

4.0

73.8

580

55~59歳

10.0

86.7

610

60~64歳

16.5

32.6

290

65~69歳

0

0

0

70歳以上

9.6

76.5

90

総合

6.1

71.8

6,460

 

「女性歯科医師(企業規模10人以上)の年齢別の勤続年数と月収」
年齢層
勤続年数
平均月給(万円)
労働者数

20~24歳

0.5

16.8

30

25~29歳

1.2

33.0

380

30~34歳

2.5

53.6

790

35~39歳

3.2

57.3

610

40~44歳

6.6

109.3

450

45~49歳

5.5

91.5

70

50~54歳

14.5

45.6

200

55~59歳

4.5

55.1

100

総合

4.2

60.9

2,630

 

上記のデータを説明します。
例えば、男性歯科医師で30~34歳の場合、勤続年数「4.5」、平均月給「75.1」、労働者数「990」と表記されています。

これは、10人以上(企業規模)に勤務してる、およそ990人の、30~34歳の男性歯科医師の、平均月給が75.1万円で、平均勤務年数が4.5年ということ。

なお、「およそ990人」や「およそ6,460人」と書いているのは、賃金構造基本統計調査では1の桁の人数が省略されているため正確な人数がわからないため。

ここで話は最初に戻りますが、賃金構造基本統計調査の平均月給が実態を反映していないと言われるのはなぜでしょうか?
(平成28年(2016年)の医療施設に従事する歯科医師の総数が101,551人で、平成28年賃金構造基本統計調査の歯科医師のサンプル数はおよそ9,110人(男性:6,460人、女性:2,630人)。サンプル数は十分なはず。)

なぜなら、賃金構造基本統計調査のサンプル分布が、現実の分布と乖離しているからでしょう。

そのことをわかりやすいように、【賃金構造基本統計調査の歯科医師の年齢層】と【医師・歯科医師・薬剤師調査の概況の年齢層】に合わせて集計し直してみましょう。

 

賃金構造基本統計調査の歯科医師(企業規模10人以上)のサンプル数と割合(平成28年※2016年)
年齢層
人数
割合

29歳以下

940

6.3%

30~39歳

2,600

18.6%

40~49歳

1,370

21.9%

50~59歳

1,190

25.2%

60~69歳

290

20.3%

70歳以上

90

7.6%

合計

101,551

 

 

賃金構造基本統計調査の男性歯科医師(企業規模10人以上)のサンプル数と割合(平成28年※2016年)
年齢層
人数
割合

29歳以下

940

14.5%

30~39歳

2,600

40.1%

40~49歳

1,370

21.1%

50~59歳

1,190

18.4%

60~69歳

290

4.5%

70歳以上

90

1.4%

合計

6,480

 

 

賃金構造基本統計調査の男性歯科医師(企業規模10人以上)のサンプル数と割合(平成28年※2016年)
年齢層
人数
割合

29歳以下

410

15.6%

30~39歳

1,400

53.2%

40~49歳

520

19.8%

50~59歳

300

11.4%

60~69歳

0

0.0%

70歳以上

0

0.0%

合計

2,630

 

 

平成28年(2016年)賃金構造基本統計調査の歯科医師(企業規模10人以上)のサンプル数

 

この結果から、【実際の歯科医師の年齢分布】と【賃金構造基本統計調査の歯科医師の年齢分布】が大きく異なることがわかります。

まとめ

上述しましたが、賃金構造基本統計調査の歯科医師に関するサンプルの分布が、現実の歯科医師の分布と乖離している。

それが賃金構造基本統計調査から得られる歯科医師の平均給与の実情とズレが大きいと感じる原因です。

乖離している具体例を挙げると…

  • 歯科医師は50歳~59歳の年齢層が一番多く、50歳以上の歯科医師が全体の半分以上を占めている。
    一方で、賃金構造基本統計調査の歯科医師のサンプルでは、30歳~39歳の年齢層が一番多く、39歳以下の歯科医師が全体の半分以上を占めている。

 

  • 歯科医師全年齢では約12%が病院勤務であるが、賃金構造基本統計調査の歯科医師のサンプルで全体の半分以上を占めている39歳以下の歯科医師は病院勤務の割合が高い(29歳以下の歯科医師のその年齢の約60%が病院勤務で、30~39歳の歯科医師はその年齢の約23%が病院勤務)。

 

  • 歯科医師の全体の8割以上が診療所に勤めていて、歯科診療所1軒あたり歯科医師は1.17人であり、歯科診療所に勤める歯科医師の7割弱がその診療所の代表者である。一方で、賃金構造基本統計調査は従業員数が10名以上の企業(クリニック)が対象になっているので、歯科医師の勤務先として一番多い規模のクリニックが対象外になっている。

 

などでしょうか。

賃金構造基本統計調査の平均給与は、他業種と比べて多い少ないなどの比較ならば参考になるように思えます。一方で歯科医師としてどのようなポジションにいる(なろうとしている)かを考慮するときは、全体の平均ではなくいろいろなデータを見てどこに当てはまるかなどをよく検討した方がいいと思います。

歯科医師の給与を詳しく知りたい方は、「歯科医師の給与の男女差は?勤続・経験年数などと共に比較してみました」や「歯科医師の給与分布と代表値(平均値・中央値・最頻値)を調べてみました」も参考にしてみてください。

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