歯科医師の給料は『男性 / 女性』で差はでる?

歯科医師の給料は『男性 / 女性』で差はでる?

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賃金構造基本統計調査のデータで比べると男性歯科医師と女性歯科医師の年収の差がかなりあることが見て取れます。年齢層や勤続・経験年数などを加味して、その原因などを考えてみました。

 

目次

 

男性歯科医師と女性歯科医師の平均年収

職業別の平均年収がどのようなものかを知りたい場合、厚生労働省の賃金構造基本統計調査が参考になります。ただし、この調査はすべての人を対象に調査したわけではありませんから、調査に協力した集団(サンプル)によっては実際とのズレが大きい可能性もあります。

歯科医師の平均年収に関しては、平成30年の調査はサンプル数も前年などに比べすくなく、さらにサンプルにもちょっと偏りがあった印象をうけました。詳しくは「歯科医師の平均年収(給与):クリニック規模と給与の関係」や「歯科勤務医は年収3,000万円の夢を見るか?」などを見てください。

そこで平成29年の賃金構造基本統計調査を元に、男性歯科医師と女性歯科医師の平均年収がどのようになっているかを紹介したいと思います(平成30年の調査結果は参考として最後にまとめて紹介します)。

 

平成29年賃金構造基本統計調査「男性歯科医師(企業規模10人以上)」

年齢

38.3歳

勤務年数

7.7年

現金給与額(平均月給)

64.7万円

年間賞与その他の特別給与額

32.2万円

労働者数

6,820人

平成29年(2017年)調査の男性歯科医師(企業規模10人以上)の平均年収:808.6万円

 

平成29年賃金構造基本統計調査「女性歯科医師(企業規模10人以上)」

年齢

36.7歳

勤務年数

3.9年

現金給与額(平均月給)

49.0万円

年間賞与その他の特別給与額

30.2万円

労働者数

2,520人

平成29年(2017年)調査の女性歯科医師(企業規模10人以上)の平均年収:618.2万円

 

平均年収は「(現金給与額) ×12 + (年間賞与その他の特別給与額) 」と計算しています。

上記のデータでは女性歯科医師の場合、平成29年の調査は企業規模10人以上に勤務しているおよそ2,520人がサンプル数(調査に協力した人の数)で、その平均年収が618.2万円、平均年齢が36.7歳、平均勤務年数が3.9年ということです。なお、調査対象のサンプルを「およそ2,520人」と書いているのは、1の桁の人数が厚生労働省のデータで省略されているため正確な人数がわからないためです。

男性歯科医師と女性歯科医師の平均年収にかなりの差があることがわかります。なお調査では月の実労働時間の平均も記載されていて、それによると女性歯科医師の実労働時間は男性歯科医師の実労働時間より月で9時間ほど短い値になっています。この9時間がおよそ1日分の労働時間だと考えても、上記の男性歯科医師と女性歯科医師の平均月給の差はそれ以上あるのは確実です。

 

性別・年齢層と勤続年数と給与の関係

上記の調査データを見ると、男性歯科医師と女性歯科医師では平均月給の他に勤続年数の差も大きいとわかります。終身雇用制度が崩れてきたとはいえ勤続年数が長くなるほど給与が高くなる傾向は想像しやすいです。この勤続年数が平均年収(平均月収)の差に大きく関係しているかもしれないので、もう少し詳しくデータを見てみましょう。

 

平成29年賃金構造基本統計調査「男性歯科医師(企業規模10人以上)の年齢別の勤続年数と月収」
年齢層
勤続年数
平均月給(万円)
労働者数

20~24歳

0.5

14.3

 20

25~29歳

2.1

40.0

 990

30~34歳

3.8

62.9

 2,500

35~39歳

8.2

71.7

 1,260

40~44歳

6.9

65.3

 560

45~49歳

10.6

87.6

 610

50~54歳

12.5

83.0

 210

55~59歳

29.0

70.4

 310

60~64歳

24.9

59.9

 300

65~69歳

20.5

95.0

 70

 

平成29年賃金構造基本統計調査「女性歯科医師(企業規模10人以上)の年齢別の勤続年数と月収」
年齢層
勤続年数
平均月給(万円)
労働者数

20~24歳

0.5

13.6

 30

25~29歳

1.4

32.0

 870

30~34歳

3.7

57.8

 470

35~39歳

3.7

52.1

 380

40~44歳

8.2

79.1

 190

45~49歳

5.5

77.9

 90

50~54歳

7.7

39.0

 230

55~59歳

6.2

66.0

 260

 

 

男性歯科医師は45歳以上では勤続年数が10年以上、さらに55歳以上では20年以上となっていますが、女性歯科医師はすべての年齢層で勤続年数が10年以下です。ただし、40~44歳の年齢層では女性歯科医師のほうが男性より勤続年数が長く平均月給も高くなっています。

また男性歯科医師は、60歳以上のサンプルがあり、院長や分院長などの高額給与となる役職に就いている割合が多いとも考えられます。例えば女性と同じように59歳以下までの男性歯科医師のデータで比較してみるということも考えられますが、実はあまり現状の結果(男性歯科医師と女性歯科医師の平均給与の差)と変わらないでしょう。理由は、男性歯科医師の30~39歳のサンプルが2,500 + 1,260 = 3,760で男性歯科医師のサンプルの約55%、全体でも約40%を占めているので、平均をとるとどうしてもこの層の影響が色濃く反映されてしまうからです。

ともかく女性歯科医師は、結婚後に出産・育児で休職もしくは退職(子育てが一段落したら再就職)などの影響で勤続年数が短くなってしまうのでしょう。

元々の歯科医師の男女比もあります(平成28年の厚生労働省の調査によると歯科医師数は104,533人で、男性が80,189人で総数の76.7 %、女性が24,344 人で総数の23.3 %となっています)が、男女間や年齢層でサンプル数の差もあるのでこの調査が歯科医師の実態をどこまで表しているかは微妙なところです。ともかく、勤続年数が平均給与に影響を与えていますが他にも要因はありそうです。それが次紹介する「経験年数」です。

 

性別と経験年数と給与の関係

資格を必要する職業、つまり転職しても業務内容が大きく変わることはないので、勤続年数より給与に影響が与えそうな要素は歯科医師としての経験年数があります。厚生労働省の賃金構造基本統計調査には男女での経験年数別のデータも記載されています。

 

平成29年賃金構造基本統計調査「男性歯科医師(企業規模10人以上)の年齢別の勤続年数と月収」
経験年数
平均月給(万円)
年間賞与(万円)
労働者数

0年

33.1

0.0

480

1~4年

45.5

30.5

1,720

5~9年

74.1

32.5

1,700

10~14年

71.8

26.5

1,350

15年以上

76.5

48.2

1,570

 

平成29年賃金構造基本統計調査「女性歯科医師(企業規模10人以上)の年齢別の勤続年数と月収」
経験年数
平均月給(万円)
年間賞与(万円)
労働者数

0年

26.8

4.14

340

1~4年

43.5

9.87

660

5~9年

44.8

88.2

410

10~14年

51.6

20.3

620

15年以上

70.4

39.7

490

 

データをみると予想通り経験年数が長くなるほど平均月給が上昇傾向にあることがわかります。経験年数が5~9年と10~14年の月給で、女性歯科医師と男性歯科医師の差が大きいのが目に付きます。この原因ははっきりしないのですが、例えば女性が育児から復職するタイミングのため給与が抑えられていたり、一方で継続して勤務していた男性のほうが役職につくタイミングが多くなり役職給の分だけ給与が上がったりしているのかもしれません。

 

まとめ

結果として、この調査からは男性歯科医師と女性歯科医師とでは給与に差がかなりありそうだとわかりました。

これは、出産や子育ての影響から医師としての経験年数や勤続年数がどうしても男性よりも少なくなってしまうためだと思われます。もちろんそのような女性ばかりではないとは思いますが、統計データとしては似た境遇にあるサンプルが多くあるとそちらの影響が色濃く反映されてしまいます。

さらに注意としては、この調査では企業規模10人以上(クリニックの従業員数が10人以上)のクリニックに勤務している歯科医師が対象となっています。ただ6割以上の歯科医師は従業員数が10人より少ないところで働いている現状から、この調査結果は多くの歯科医師の感覚とは違っているかもしれません(参考「歯科医師の平均年収(給与):クリニック規模と給与の関係」)。あくまでも参考になるかなという感じで見た方がいいと思います。

なお「歯科医師の給与分布と代表値(平均値・中央値・最頻値)を調べてみました」にて歯科医師の給与分布を紹介していますが、男性歯科医師と女性歯科医師それぞれの給与分布も紹介しています。気になる方はそちらもチェックしてみてください。

 

資料:平成30年の調査結果

 

平成30年賃金構造基本統計調査「男性歯科医師(企業規模10人以上)」

年齢

37.4歳

勤務年数

6.2年

現金給与額(平均月給)

70.3万円

年間賞与その他の特別給与額

56.1万円

労働者数

4830人

平成30年(2018年)調査の男性歯科医師(企業規模10人以上)の平均年収:899.7万円

 

平成30年賃金構造基本統計調査「女性歯科医師(企業規模10人以上)」

年齢

37.3歳

勤務年数

4.7年

現金給与額(平均月給)

57.4万円

年間賞与その他の特別給与額

60.0万円

労働者数

2,420人

平成30年(2018年)調査の女性歯科医師(企業規模10人以上)の平均年収:748.8万円

 

平成30年賃金構造基本統計調査「男性歯科医師(企業規模10人以上)の年齢別の勤続年数と月収」
年齢層
勤続年数
平均月給(万円)
労働者数

20~24歳

0.5

27.3

  160

25~29歳

1.6

34.7

  1,440

30~34歳

2.5

75.9

  810

35~39歳

5.2

99.8

  1,010

40~44歳

7.7

78.1

  270

45~49歳

12.1

94.0

  500

50~54歳

11.0

51.4

  210

55~59歳

20.0

111.8

  220

60~64歳

33.5

86.0

  80

65~69歳

11.4

97.2

  90

70歳以上

35.5

87.5

  50

 

平成30年賃金構造基本統計調査「女性歯科医師(企業規模10人以上)の年齢別の勤続年数と月収」
年齢層
勤続年数
平均月給(万円)
労働者数

20~24歳

0.5

20.2

  30

25~29歳

1.5

41.2

  290

30~34歳

3.8

51.8

  780

35~39歳

4.1

89.3

  300

40~44歳

5.0

59.6

  670

45~49歳

9.7

53.9

  360

 

平成30年賃金構造基本統計調査「男性歯科医師(企業規模10人以上)の年齢別の勤続年数と月収」
経験年数
平均月給(万円)
年間賞与(万円)
労働者数

0年

29.8

0.0

990

1~4年

48.8

18.6

1,160

5~9年

91.6

167.0

1,090

10~14年

92.7

62.3

540

15年以上

93.2

32.0

1,050

 

平成30年賃金構造基本統計調査「女性歯科医師(企業規模10人以上)の年齢別の勤続年数と月収」
経験年数
平均月給(万円)
年間賞与(万円)
労働者数

0年

29.4

4.17

380

1~4年

67.3

85.6

470

5~9年

52.7

50.6

490

10~14年

75.0

81.8

260

15年以上

55.1

69.7

830

 

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