「歯科衛生士をやめたいけど、その後の人生に不安がある」
「辞めた歯科衛生士は今なにをしているのだろう」
このように感じている歯科衛生士さんはいらっしゃいませんか。
高校を卒業してから歯科衛生士学校で専門的な勉強をして、就職してからもずっと歯のことに携わっている…。
小さな空間で閉じこもって、歯科衛生士として歯科医院で仕事をしていると「他の仕事もしてみたい」といった気持ちが出てくることもあるのではないでしょうか。
そこで今回は「歯科衛生士であることを辞めた元歯科衛生士は今何をしているのか」といった内容で、10人の事例を紹介しながらお話していきます。
歯科衛生士をやめた理由
歯科衛生士の勤務実態調査 報告書によると歯科衛生士で転職したことがある人の割合は、76.4%となり4人中3人は転職経験があるという結果でした。
転職回数 | 割合 |
---|---|
1回 | 21.40% |
2回 | 17.80% |
3回 | 17.60% |
4回以上 | 19.60% |
また、実際に転職した人の主な転職理由は「出産」が11.7%と最も多く、女性特有のライフイベントでの転職が理由にあるようです。
理由 | 割合 |
---|---|
出産・育児 | 11.7% |
結婚 | 9.9% |
人間関係 | 9.1% |
スキルアップ | 4.8% |
家庭の事情 | 4.3% |
仕事内容 | 4.1% |
給与 | 3.7% |
歯科衛生士をやめた理由は、だいたい7つに分かれます。
① 結婚
旦那さんの地元に帰るなど結婚をきっかけに仕事をやめる方もいます。復帰しやすい歯科衛生士ですが、旦那さんの収入が安定しているとそのまま復帰せずにいる場合も多いようです。
② 出産・育児
妊娠・育児中は仕事を続けるのが難しく、出産後は子どもの体調不良で休まざるを得ない場面も多数。担当アポイントが入っていると簡単に休めず、余裕がない中で他のスタッフに負担がかかることを気にする方も。
③ 人間関係
スタッフ同士、経営者とのトラブルなど人間関係の悩みはつきません。精神的に追い詰められて、やむなく辞めざるを得なくなることも…。
④ 給与
仕事の量の割にお給料が安いなども退職する原因のひとつ。
⑤ 仕事内容
まじめな人ほど仕事に対してプライドを持っています。歯科衛生士としてやりがいのある仕事ができないと不満がたまってしまいます。
⑥ 勤務状況
休みたいのに休めない、残業が多い…など勤務状況が過酷な場合も退職理由では多いです。人員にゆとりがあってフレキシブルに働けないと、続けにくいですよね。
⑦ スキルアップのため
勉強熱心な歯科衛生士さんは、自分のやりたいことを叶えるためのステップアップとして退職されます。
このような理由で退職を決める方が多いです。
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歯科衛生士であることを辞めた10人の事例
それでは、歯科衛生士を辞めた元歯科衛生士は、今現在なにをしているのでしょうか。10人の事例をご紹介します。
①異業種の事務職へ転職した事例
「歯科業界に嫌気がさしたので、異業種へ転職しました。今は税理士事務所の事務です。まったく違う業種だったので、簿記やマナー講座の勉強をして資格取得しました。それでも転職活動は難しかったです。また、歯科衛生士の給料と比べるとずっと安月給で働いています。歯科医院の人間関係の面倒くささや歯科衛生士の忙しさに比べたら楽になりましたが、これでよかったのかと今でも悩んでいます。」
異業種では、ほかに飲食店のスタッフ、営業職などがありました。
誰でも始めやすい反面、比較的過酷な条件で働かなければならない傾向にあるようです。
②資格を活かして他業種に
歯科衛生士の資格をいかして医療系の企業や他職種に転職した方もいます。
・歯科機器、歯科材料などの企業
「歯科衛生士の知識をいかしながら働けるため、歯科関連企業に就職しました。歯科医院への訪問、セミナー開催、学会での営業活動などが主な仕事です。条件はよくなったものの、土日の休日出勤は多く、求められる仕事の質は高いです。最低限の社会人スキルが必要なので、一般常識も勉強しました。歯科医院に訪問して営業活動もするので、歯科の知識はもちろん、商品に関してもかなり熟知してなければなりません。」
・歯科雑誌や歯科Webメディア
「歯科のWebメディアに所属しています。記事の執筆やセミナー動画の内容検討、歯科医師や歯科衛生士との人脈づくりなど行なっています。医療従事者向けの情報発信なので、他の歯科衛生士よりも新しい知識を知っておく必要があり、その勉強が大変です。ただ、テレワークなどもあるので、ずっと現場の歯科衛生士よりは働きやすいな部分もあります。」
「母校の先生から声がかかって、学校の教員をしています。学生たちへ授業をしたり、テストチェックしたり、あらゆる行事の準備をしたり…意外と仕事量が多くて大変です。思っていたよりも条件は悪く、出勤数や拘束時間の割に給料が安いのが欠点かな。時給換算したら現場で働くほうがずっといいです。ただ、学生たちが立派に卒業していく姿を見られるのはやりがいがあります。」
・歯科技工士
「人とコミュニケーションをとるのが苦手なので歯科衛生士は向いてないのではないかと思い、歯科技工士の学校に入って資格を取得しました。今はダブルライセンスで働いています。ただ、結局歯科衛生士の仕事の割合が多いです。そのほうが稼げるから…。唯一無二の存在で重宝されますが、お給料はそこまで変わらないので、学校に通う費用を考えるとよかったのかわかりません。」
・介護士
「歯科衛生士の仕事に自信がなくて、ヘルパーとして働いています。身の回りのお世話をするだけなので、体力は使いますが、精神的なプレッシャーがなくて気が楽です。ただ身体はしんどいですし、せっかく資格があるので、勇気を出して訪問歯科で勤務してみるのもいいかもしれません。結局、歯科衛生士に戻りそうです。」
・ケアマネージャー
「昔、歯科衛生士として働いていましたが、復職に自信がなかったので、資格をとってケアマネとして勤務していました。いろんな利用者さんの管理をしていくのは大変ですが、やりがいあって楽しいです。知識がある分、歯科医院とのやり取りもスムーズにできるので、自分には合っていると感じます。」
・看護師
「歯科衛生士の条件の悪さが嫌になって、卒後すぐに看護学校に入り直しました。学校に入るのも、国試を受けるのも歯科衛生士より大変でした。でもお給料はずっといいです。夜勤があってしんどいので、年齢重ねたときにどこまで働けるか不安もあります。人間関係は女の世界なので歯科とあまり変わらないですね。歯科の知識がある分、先生や他の看護師から頼られることも多いです。」
これらの仕事は、歯科衛生士の仕事と遠すぎず働けるので、今までしてきた勉強が無駄にならないのが特徴です。
③フリーランスとして活動
スキルを身につけて、フリーランスとして活動されている方もいます。歯科衛生士×◯◯とスキルが組み合わされると強みになります。
例えば、動画編集者に転身した人のお話を紹介します。
ほかには、プログラマー、ウェブデザイナーなど学校に通ってスキルを身につけて仕事をしている人もいます。
初期投資は必要ですが、コツコツした作業が向いている人には良いかもしれません。
④正社員の仕事をしていない
中には正社員として定職につかない人もいます。専業主婦に転身した方は、、
「結婚して子どもできてからは専業主婦で、働いていません。子どもが大きくなったらパートタイムで働くつもりですが、歯科衛生士をやるかは迷っています。スーパーのレジなどもやってみたいですが、お給料は歯科衛生士の半分ぐらいになってしまうのが悩みどころです。」とのことでした
歯科衛生士を辞めた元歯科衛生士は、上記のような仕事をしていることが多いようです。他の仕事でも苦労はあるので、どこにやりがいを感じられるかが大事なのかもしれませんね。
歯科衛生士をやめたいと思ったときには
先ほど紹介したように、異業種へ転職するときに気をつけることは下記の点です。
- 給料が下がる可能性が高い
- 就活に苦労することが多い
- 社会人としてのマナーが必須
- スキルを身につけるためにお金がかかることがある…など
転職したからといって条件がよくなるとは限らないのが転職。
やめたいと思ったときには、まずは原因を探り、本当にやめるべきなのかを見極めることが重要です。
仕事がきらい、職場がよくない、経験が浅くてできない…など、原因によっては歯科衛生士を辞める前にできることがあるかもしれません。
また、もし転職するとしても新たに勉強は必須であること、転職しても辛いことはあることも加味しましょう。
幸い、転職に失敗しても戻りやすいのは、手に職がある歯科衛生士のメリットのひとつですね。
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ライター
歯科衛生士/ライター・動画編集者
歯科医院で歯科衛生士をしながら、歯科メディアにてライター・動画編集者としても発信活動中。
現場で働くからこそわかる、リアルな声をお届けします。