Q.歯科大に進学する前はどんなことを考えていたりしましたか？ 両親が社会の教師なのですが、それもあって歴史が好きでしたね。本を読んだり、大河ドラマを観たりすることが趣味でした。おそらく知って、学んで、それを人に教えることが昔から好きだったのだと思います。

  Q.大学では将来が不安になったとお聞きしましたが？ 4年生か5年生くらいに教授から「簡単に稼げると思うな。歯科医を甘く見るな」と戒められたのですが、自分が不器用だと思っていたので将来が不安になりました。

  Q.そこで「武器を持つ」という考えになった訳ですね？ そうですね。大学の摂食・嚥下が有名だったので、そこのポストを狙っていこうと当時は考えました。施設も見学して当時は社会人大学院へ行こうと思っていました。

  Q.研修医はどちらでされたのですか？

前期の開業医は知り合いがいない環境に1人で飛び込もうと思って、静岡県の年中無休のクリニックを選びました。見学に行って厳しい環境だったので逆にやってみようと。笑

1年治療したら大学院に進むつもりだったので、「せっかくなら厳しいところで」という気持ちでした。

Q.実際に研修をしている中で心境の変化があったと？ 最初の1〜2ヶ月は本当に大変だったのですが、少しずつ慣れて6ヶ月で思ったより出来るようになりました。「治療楽しいな」と思うようになって、自分が向いていないと少し諦めかけていたのですが、大学院ではなく医院への就職へ舵を取りました。

  Q.就職先は先輩のご紹介で決められたようですが、決め手はどのあたりでしたか？ まずは信頼できる先輩の紹介というところが大きいです。自費中心のクリニックでしたが、朝の勉強会があるなど教育カリキュラムもしっかりしているところもポイントでした。

  Q.最初の就職先はどんな医院でしたか？ 東京都の自費中心の医院です。「一列とスタッフ1人を渡すので、自分が経営する感覚でやりなさい」という院長からのメッセージがありまして、5年勤務したら開業するというのが基本になっているところでした。
治療に関しても「部分よりは全体を見る」こと、「患者さんに今までにない視点を提案できる」ことを求められていました。最初の4年は院内の仕事に必死に向き合っていました。

  Q.勤務5年目で現在の職場での非常勤をスタートしましたね？ 大学の部活の先輩から紹介なのですが、最初は「数を見たい、もう少し稼ぎたい」という気持ちからでした。それに当時CTがあるクリニックは少なく、CTがあることも自費がやりやすいという観点から興味がありました。

  Q.掛け持ち勤務を始めてみてキャリアについてどんな心境の変化がありましたか？ キャリアについては常勤で働いている医院の「開業するべきというイズム」がありましたので、「開業しなくちゃ、でもどうしようかな」という迷いの中でした。それにここで働く上で得られること、認められることが増えていくことも実感していました。

  Q.具体的にはどんなことで充実していましたか？ 当時ここは担当医制ではなかったのですが、自分から提案して担当させてもらったり、1ヶ月くらいで自分の列がいっぱいになってインプラントや移植もやり始めたり、患者さんのポジティブな声が入ってきたり、要するに自分の信用を上げていけていることに楽しさを感じるようになっていました。

    Q.信用を上げるために意識していたことはありますか？ 信用を上げる上で、アシスタントの方をはじめ関わるスタッフの方たちの信用を得ることは何より大事だと思います。それは患者さんにも伝わって、自分の評価や自信につながると思いますね。現在もそこは変わりません。

    Q.新しいチャレンジでも結果を出せてきた中で、矯正というワードが出てきましたね？ そうですね。治療を行っていく中でどうしても矯正も必要だと感じていました。矯正は大学に残って学ぶことが基本なので、金銭面でもなかなか決断できなかったのです。そこで東京の院長先生に相談したら「絶対やってみた方がいい」と言ってくださって、矯正の先生を紹介してもらいました。

    Q.働き方がここでガラッと変わりますね？ はい。現在の理事長先生にも「週3日が現在の医院、週3日が矯正」という働き方を提案していただきました。自分も一般歯科と矯正歯科の両方をやりたいと思っていたので最高の提案でした。こういう提案をいただいたのも自分がここで頑張ったことが結びついたものだと思っております。

    Q.結果的に矯正歯科でも4年勤務しここで常勤勤務をスタートしますが、ここはどんな心境からになりますか？ 現在の職場でアドバイザーのような立ち位置になって多くのことを変えていったり、周りに認められることが嬉しかったです。同時に開業への気持ちも高まっていましたが、臨床をもう少し追求するのもいいかなと想いの方が強くなりました。
現在の医院で矯正治療をやりたいと思ったことも大きいですし、自由度が高いので「開業とあまり変わらないのでは」とも考えていました。まずは3〜4年は開業は考えずに常勤で勤務しようと決めました。

  Q.現在の医院で「自分の立ち位置や役割」を実力で切り開いてきたようにお見受けしますが？ 自分が努力をしたことはもちろんありますが、周りの方々の理解や協力があったからだと思います。まず理事長先生からの信頼は大きいですね。「開業ではなく継承はどうか？」とおっしゃっていただいたこともありがたかったです。
あとは治療だけでなく、チームとして組織として成熟していったことも自分の自信になり、ここで自分の組織を作るのも魅力的と感じるようになっていました。

    Q.医院を継承することを念頭に院長に就任しますが、どのような気持ちでしたか？ 先ほども話しましたが、チームが成熟していることに嬉しさを感じていて、どんどん成熟化を進めることがやりがいになっていました。考えていくと「ここで院長になる」ことが自分にとってプライスレスという結論になりました。

      Q.院長になってから変わったことはありますか？ 院長になって変わったことは特別ないです。それ以前からチームをまとめることもしていたので、強いて言えばそこに対する迷いがなくなったというところかなと思います。自分の中で変わらない仕事の価値観は変わらないです。

      Q.仕事の価値観をいくつか教えてもらえますか？

「人から頼られたことは全力ですること」。それが後々生きてくるのを感じていました。チャンスはどこにあるかわかりません。

そして「スタッフに信用されること」。チーム医療をする上で必要不可欠だと思っています。

あと価値観とは少し違うかもしれないですが「お金は自分に投資する」こと。周りのドクターの影響も大きいですが若手時代は特に自己投資をたくさんしました。

Q.仕事ではストイックな印象の先生ですが、オフのときの顔は？ 開運が好きです。運は待っていてはダメで、常日頃からのスタンスがチャンスを掴むことにつながると思っています。具体的には「運を動かす」と書く運動を習慣にしています。
あとはサーフィンをして海で瞑想したり、アーシングしたり、睡眠をしっかり取ったりしています。何より体が資本なので、そこのケアを大事にしています。

  Q.現在は理事長先生のもとでNo2として勤務していますが、心掛けていることはありますか？ 理事長先生が何を考えているかを理解すること、それを3番手・4番手に伝えることです。No1のキャラを自ら演じて、シビアなことを自分が言うことも意識しました。
あとは理事長先生との信頼関係ですね。やはりコミュニケーションの量も大事ですし、時間を共有することで相手の考えや状況を理解することは円滑に進める上で大きいと思います。

        Q.若手の歯科医師にメッセージをお願いします

まず「やりたいことをやった方がいい」と思います。

何故やりたいのかの理由がどれくらい出てくるかによって考えますが、たくさん理由が出てくるものは正解かもしれないですね。その上でそれをやるためには何が必要か分解していくと少しずつ道が見えてくるはずです。
迷うこともありますが、迷ったら全部やってみていいと思います。あとは信頼できる人の存在も大事です。そういう人に出会えるようにチャンスに対しては積極的に取り組むことをお勧めします。