「歯科衛生士は細かい作業が求められ、手先の器用さが重要である」
…働き始める前までは、このように思っていた方もいらっしゃるのではないでしょうか。しかし、実際には、手先の器用さ以上にコミュニケーション力のほうが必要な場面が多いですよね。
歯科衛生士は単なる「お掃除ロボット」になってはいけません。いくらメインテナンスで完璧にプラークや歯石を取りきったとしても、患者さんの日頃のブラッシングが疎かだったり、生活習慣が乱れていたりすると、むし歯や歯周病を防げないですよね。
患者さん自身が、病気や健康に向き合って行動を変えていかなければ、歯科疾患は繰り返してしまいます。そこで必要なのは、技術以上にコミュニケーション力なのです。
今回は、歯科衛生士にとって重要なスキル「コミュニケーション力」の磨き方について解説していきます。
コミュニケーションとは
コミュニケーションとは、お互いの気持ちを伝える意思疎通や情報伝達のことを指します。ポイントは「お互いに」です。
患者さんに口腔衛生指導(OHI: Oral Hygiene Instruction)をするとき、一方的に正しいと思う情報を押し付けるだけになっていませんか?それは良いコミュニケーションとは言えないかもしれません。
コミュニケーションは「言語」と「非言語」に分けられます。
- 言語:言葉そのもの
- 非言語:表情や声のトーン、身振り手振り
さらに、「伝える」と「聴く」を加えて、コミュニケーション力は次の4つに分類されます。
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1.伝える × 言語
医療従事者ではない相手に、簡単な言葉でわかりやすく伝える。 -
2.伝える × 非言語
患者さんに合わせて、話しやすい雰囲気をつくる。 -
3.聴く × 言語
患者さんの話を最後まで聴く姿勢や態度を示す。 -
4.聴く × 非言語
言葉で表現されていない内容を読み解く。
これらをうまく活用することが、患者さんとのコミュニケーションを潤滑にする「成功の秘訣」となります。
歯科衛生士がコミュニケーション力を磨く3つのメリット
歯科衛生士がコミュニケーション力を磨くことで得られるメリットは、主に以下の3つです。
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1.患者さんの行動変容を促せる
患者さんのモチベーションを高めたり、良くない行動を少しずつ変化させたりすることができます。
伝えたことが実践され、患者さんの口腔内の状態が改善されると、仕事へのモチベーションも上がります。
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2.スタッフや先生とうまくやっていける
一緒に働くスタッフや先生たちともスムーズなコミュニケーションが取れるようになり、仕事が順調に進められます。
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3.人脈が広がり、新しいチャンスを得られる
職場を越えて勉強会などで他職場の医療従事者とつながることで、スキルアップや新しい仕事のチャンスを掴むことができます。
このようにコミュニケーション力を高めると業務上のメリットがたくさんあります!
歯科衛生士の重要キル「コミュニケーション力」の磨き方3選
コミュニケーションの磨き方は大きく分けて3つに分けられます。今回ご紹介するのはほんの一例で、細かなやり方は他にもたくさんあります。ご自身や患者さんによって合う合わないがあるので、ぜひいろんな方法を試してみてください。
①コミュニケーションの基本
まずは、コミュニケーションの基本となる部分を意識しましょう。
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・積極的に挨拶をする
自分から挨拶をすると、お互い気持ちが良いですよね。
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・身体の向きを考える
ユニットのときは患者さんの背後から話しかけてしまいがちですが、おすすめしません。横にくるか、斜め正面がおすすめです。真正面は威圧感があるので、横並びで表情が見えるようにするのが安心して話せるのではないでしょうか。
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・感謝の気持ちを伝える
どんな人に対しても常に感謝の気持ちを忘れず、またちゃんと言葉で伝えることが大切です。気持ちよく働くことができます。
②相手中心の会話をする
コミュニケーションの基本ができたら「伝える」ことの前に、相手中心の会話を心がけます。
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・相手の話に耳を傾ける
まずは患者さんの話に耳を傾けなければ、患者さんもこちらの話を聞いてくれません。相手の想いや言い分を聞いて、その上でこの方は何を求めているのかを把握します。
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・相槌を打つ
無反応では話す気力がなくなってしまいます。また多すぎても不自然です。患者さんの言うことをそのままオウム返しにしたり、別の言葉に言い換えたり、肯定的な言葉に変化させたりなども有効です。
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・ペーシングを意識する
相手の話し方やスピード、声の大きさなどをできる限り合わせます。心理学的に、自分と似た人に好感を持つので、患者さんは話していて心地よくなります。
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・リアクションを取る
表情は、オープンフェイス(笑顔、びっくりなど)、ニュートラルフェイス(素の表情)、クローズドフェイス(悲しい、怒り、真剣など)があります。これらを相槌に加えると、患者さんの話に感情移入できて共感力が高まり、さらに話を引き出すことができます。
- ・相手の気持ちになる
一番は相手の気持ちを考えること。わからなくてもわかろうとする姿勢は相手にもちゃんと伝わります。
③自分のテクニックを磨く
最後に、伝えるために自分のテクニックを磨きます。
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・結論から話すなど順番を意識する
わかりやすい話のためには結論から話すのが一番です。男性は特に結論を早く求めるので、結論を言ったあとに詳細や補足をつけるようにします。
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・具体的に話す
抽象的な話は何が言いたいのかわかりません。例えを使うなどイメージしやすいように具体的に話しましょう。
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・質問形式で問いかけ、自分の言葉で話してもらう
すべての答えをこちらが与えてしまっては、患者さんは受け身になってしまい、実際に行動に移してもらえません。方向性を決めて、質問形式で問いかけます。実行するには、ただ伝えるより自分で決めて自分の言葉で話すのが有効的です。
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・常に情報を集めて新しいネタを準備する
治療やメインテナンスで毎月のように会っていると話すネタも尽きてしまいますよね。また医療は常に常識が変わるので、新しい情報を仕入れてネタを準備します。話すことに困らなくなり、患者さんも毎回来るのが楽しみになります。
このようにしてコミュニケーション力を高め、患者さんの健康観を改善していけるようトライしてみてくださいね。
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ライター
歯科衛生士/ライター・動画編集者
歯科医院で歯科衛生士をしながら、歯科メディアにてライター・動画編集者としても発信活動中。
現場で働くからこそわかる、リアルな声をお届けします。